救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

急性心不全の患者に対してフロセミドを早期投与すれば入院中の死亡率が減らせるかもしれない

急性心不全の患者に対してフロセミドを早期投与すれば入院中の死亡率が減らせるかもしれない

(情報)
The REALITY-AHF研究(日本での多施設観察研究 https://goo.gl/vtE4io)に参加した20施設,フロセミドが投与された1291名が対象.フロセミドが投与されている.ER受診からフロセミド初回投与までの所要時間が60分未満(早期投与群)と,60分以上(非早期投与群)の2群に分けてpropensity scoreを用いて分析.

フロセミド初回投与までの所要時間の中間値は90分であった.対象者の37%でER受診から60分以内にフロセミドを初回投与されていた.2群間で受診後48時間以内の昇圧薬の使用頻度に有意差はみられず.入院中の死亡率は早期投与群(2%)のほうが非早期投与群(6%)と比較して低かった.またフロセミド初回投与までの所要時間が100分を超えると,死亡率が大きく高まった.

したがって急性心不全の患者に対して,ER受診からフロセミド初回投与までの所要時間が短いほど,入院中の死亡率が低くなる可能性が示唆された.

Time-to-Furosemide Treatment and Mortality in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure. Matsue Y, Damman K, et al: J Am Coll Cardiol; 2017;69 (June 27): 3042-3051.

(私見)
臨床感覚として,ERを受診する急性心不全は「早期診断および早期治療が予後を大きく左右する病態」の一つだと思っています.そのため今回の報告は納得感が得られるものでした.急性心不全の原因は単一ではありませんので,単に「急性心不全だね!フロセミドを早く投与すればオッケー!」という話にはなりません.しかしERにおける急性心不全の診療の質として,あるいは多職種間での共通言語として「Door to Furosemide time」という考え方は,わかりやすいだろうなぁと感じました.

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中等度の急性膵炎でも積極的な輸液療法を考慮する

中等度の急性膵炎でも積極的な輸液療法を考慮する

(情報)
60名が参加した単施設ランダム化比較試験。上腹部痛・アミラーゼまたはリパーゼの上昇(正常上限の3倍以上)・急性膵炎の画像所見のいずれか2つを満たした急性膵炎を対象とした。ただしSIRS、臓器障害を認めるものは除外。対象となる急性膵炎の患者は4時間以内に、積極的輸液療法群(20ml/kgの急速輸液と3ml/kg/hの持続点滴)と、標準的輸液療法群(10ml/kgの急速輸液と1.5ml/kg/hの持続点滴)の2つへ無作為に割付。輸液はいずれも乳酸リンゲル液を使用した。36時間後の臨床所見の改善(ヘマトクリット・BUN・クレアチニンの低下、腹痛の改善、経口摂取可能)がみられるか評価した。

36時間時点で、積極的輸液療法群のほうが標準的輸液療法群と比較して、臨床所見の改善例が多くみられた(積極群70% vs 標準群42%)。積極的輸液療法群のほうがSIRS発症率が低かった(積極群7.4%、標準群21.1%)。血液濃縮の発症頻度も積極的輸液療法群のほうが低かった(積極群11.1%、標準群36.4%)。いずれの症例でも過剰輸液の徴候はみられなかった。

よって中等度の急性膵炎では、早期から乳酸リンゲル液による積極的な輸液療法を行うことで、臨床所見を改善しうることが示唆された。

Early Aggressive Hydration Hastens Clinical Improvement in Mild Acute Pancreatitis. Buxbaum JL, Quezada M, et al: Am J Gastroenterol; 2017;112 (May): 797-803.

(私見)
臨床感覚に一致した研究結果だと感じます。充分に輸液を行い、充分に鎮痛し、充分に血糖コントロールを行う、ですね。

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小児に対してERで処置時麻酔を実施する際,どの鎮静薬が無難だろうか?

小児に対してERで処置時麻酔を実施する際,どの鎮静薬が無難だろうか?

(情報)
6295名の小児を対象とした多施設前向きコホート研究.736名(11.7%)に有害事象が発生。酸素化低下(353名:5.6%)、嘔吐(328名:5.2%)が最も多い有害事象であった。69例(1.1%)の重大な有害事象が発生し、86名(1.4%)で臨時対応を要した。薬剤別での重大な有害事象の発生率を比較すると、ケタミン単剤での鎮静が最も少なく(17名、0.4%)、臨時対応を要する事例も少なかった(37名:0.9%)。尚、プロポフォールでの重大な有害事象の発生率は3.7%、ケタミン+フェンタニルでは3.2%、ケタミン+プロポフォールでは2.1%だった。

鎮静薬の種類によって重大な有害事象の発生率は異なる.ケタミンとともにプロポフォール、またはフェンタニルを併用するよりも,ケタミン単剤で鎮静するほうが重大な有害事象の発生率は少なかった。

Bhatt M, Johnson DW, Chan J, et al. Risk Factors for Adverse Events in Emergency Department Procedural Sedation for Children. JAMA Pediatr. 2017 Oct 1;171(10):957-964. doi: 10.1001/jamapediatrics.2017.2135. (Original) PMID: 28828486

(私見)
成人も含めて、処置時の麻酔(Procedural sedation)について、組織文化を変革させていく必要ありますね。。。皆さまの施設では、どのように対応していますか?

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末梢静脈路の確保困難な癲癇重積発作への対応

末梢静脈路の確保困難な癲癇重積発作への対応

(情報)
末梢静脈路(IV経路)を確保できていない,てんかん重積発作に対しては,非末梢静脈路(非IV経路)(頬粘膜・直腸・鼻腔・筋肉内)でもいいかもしれない.

IV経路と非IV経路での投与を比較したRCTを対象としたシステマティックレビュー・メタ解析。

非IV経路からのベンゾジアゼピン系薬剤(BDZ)投与は、IV経路からのBZD投与と比較して治療失敗が少なかった(オッズ比0.72)。尚,小児集団では有意な差は見られず(1.16)。非IV投与はIV投与と比較して投与から癲癇発作の消失までに要した時間は長かったものの、診察開始から癲癇発作の消失までに要した時間は短かった(平均差3.41分)。呼吸抑制への対応は両群で同等。

Intravenous Versus Nonintravenous Benzodiazepines for the Cessation of Seizures: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.
Alshehri A, Abulaban A, Bokhari R, Kojan S, Alsalamah M, Ferwana M, Murad MH.
Acad Emerg Med. 2017 Jul;24(7):875-883.

(私見)
痙攣重積発作で速やかに静脈路確保が困難な場合は,これまで以上に他の投与ルートを活用したい.

 

小児の交通事故で,腹部症状のないシートベルト痕への対応

交通事故で受診した小児において,初期診療では腹痛や圧痛を認めないものの,シートベルト痕がある場合は,腹部外傷のリスクをどのように捉えるべきか.

(情報)
シートベルト痕はあるものの,初期診療で腹痛や圧痛を認めない小児のうち5.7%で腹腔内損傷を認めた.そのうち更に2%は急性期に外科的治療を要した.(Pediatr Emer Care 2017;33:120)

(私見)
よって,交通事故によってシートベルト痕を認める小児では,たとえ腹部症状がない場合でも慎重に経過をみる,侵襲性の低い検査を行うなどの対応を要すると考える.

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これから書こうと思っているコト

 毎日充実した生活を送っているつもりですが,より愉しく過ごすために現状を見つめ,過去を振り返り,目的や目標など先を見据えた生き方をしてみようと思いまして,備忘録目的に書き始めることにしました.そのためBlogというよりもポートフォリオの色合いが強いですし,かなりのんびりとした不定期亢進になると思います.普段の雑感や記録はこれまで通りTwitterFacebookを利用し,こちらは自分の中である程度整理しながら書こうと思います.

 さて,その内容ですが,とりあえず…

  • 家族の一員としての自分 : 私的な自分
  • 医者としての自分 : 公的な自分

 大雑把に分けて2領域の自分について扱おうかと考えております.あまり具体的に構成や内容を考えているわけではなく,進めながら考えていこうと思います.