救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

浸透圧ギャップを認める場合は,ヤバイ状態かもしれない

浸透圧ギャップを認める場合は,ヤバイ状態かもしれない

(情報)
浸透圧の実測値と計算値(2x(Na+ + K+ ) + glucose/18 + BUN/2.8)の差を「浸透圧ギャップ」としている.アニオンギャップを伴うアシドーシス,原因不明の意識障害,薬物中毒の疑いがある,アルコール中毒の疑いがある,プロピレングリコール中毒の疑いがある,といったときに浸透圧ギャップを計算するのが良い.

浸透圧ギャップの基準値は-10~10 mOsmol/kgである.浸透圧ギャップ >20 mOsmol/kgの際は,水溶性の低分子化合物(例:メタノールエチレングリコール,イソプロパノール,プロピレングリコールジエチレングリコール,アセトン)の摂取を疑う.浸透圧ギャップが生じている際は,造影剤腎症を引き起こす可能性がある.浸透圧ギャップを招く最も頻度の多い原因はアルコール中毒である.その他の原因としては,アルコール性ケトアシドーシス,糖尿病性ケトアシドーシス,乳酸アシドーシス,ショック,腎機能障害,マンニトール点滴の影響などである.

アルコール中毒を疑う際は,経時的に浸透圧ギャップを計測するのが有用である.中毒発症の早期に採取した血液検体では,アルコール吸収によって浸透圧ギャップが生じているが,アニオンギャップは生じていない.時間経過した段階で採取した血液検体では,吸収されたアルコールが酸へ代謝されているため,浸透圧ギャップが基準値内へ戻っている.その一方でアニオンギャップが生じている.アルコール中毒を除けば,浸透圧ギャップを経時的に計測するのはあまり有用ではない.

以上より,浸透圧ギャップが上昇しているときは,何らかの危険な状態へ陥っている可能性が示唆される.

Serum Osmolal Gap in Clinical Practice: Usefulness and Limitations. Liamis G, Filippatos TD, et al: Postgrad Med; 2017;129 (May): 456-459.

 (私見)
アルコール中毒の際は,浸透圧ギャップの値を利用して血中濃度の推定値を計算することがあります(推定アルコール血中濃度=浸透圧ギャップ×4.6).また意識障害の際や,病態がはっきりしないショック状態,重症病態の際は血清浸透圧の実測値を検査室へ依頼することがあります.やや限定的な有用性ではありますが,知っていると役立つTipsですね.

 

※アルコール血中濃度と臨床症状
血中濃度(mg/dl)  症状
 50-100       気分の発揚、陽気、協調運動の障害
 100-         明らかな運動失調、品行の変化
 200-         傾眠、嘔吐
 300-         昏睡、反射の消失、低体温、血圧低下
 400-         呼吸抑制、CPA(心肺停止)のおそれ
(ただしアルコール多飲者は上記よりも高い血中濃度で症状を発症することあり)

 

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