救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

平均血圧ではなく平均灌流圧が低いことで腎障害の発生率が高くなるかもしれない

平均血圧ではなく平均灌流圧が低いことで腎障害の発生率が高くなるかもしれない

university of Maryland school of medicine department of emergency medicine Educational Pearls(https://umem.org/educational\_pearls/3853/)より、感覚的に捉えていたことについて多施設前向きコホート研究が紹介されていたので、翻訳。

REACT Shock Study - Relative Hypotension and Adverse Kidney-related Outcomes Among Patients with Shock

血圧依存性のショック患者における相対的低血圧(平均灌流圧の低下度合と持続時間)と新規発症した重度AKIおよび重大な腎障害(MAKE)の発生率との関連について調べたもの。

定義

平均灌流圧(MPP)=MAP - CVP
MAKE-14:14日目の死亡、RRTの新規開始、または血清クレアチニンが初期値から2倍になったことの複合測定値
ベースのMPPはカルテ中の罹患前BP値を用いて推定し,ベースのCVPは事前のエコー所見または推定平均値を用いて推定した.

方法

302名の患者を対象とした多施設前向き観察コホート研究

除外基準
年齢40歳未満、外傷がICU入院の主な理由、活動性出血、少なくとも2回の血圧測定値が得られない、妊娠、「治療を行う臨床医の見解で、血圧目標値を高くまたは低くすることが特に必要とされる状態」

結果

時間加重平均MPP低下がパーセンテージ増加するごとに、新規有症のAKIおよびMAKE-14を発症するオッズはそれぞれ5.6%(95%CI、2.2-9.1;P=0.001)および5.9%(95%CI、2.2-9.8;P=0.002)増加した。
新たに有意なAKIまたはMAKE-14を発症するリスクとMAP<65mm Hgで過ごした時間の割合との間の関係は、統計的に有意ではなかった

結論

ショック状態の重症患者では、ベースライン血圧と比較して相対的な低血圧の程度が高く、長かった患者では、腎臓の有害な転帰の発生率が高かった

備考

末梢臓器の損傷を考える際には、静脈のうっ血・容積過多も考慮する(MAPだけでなくMPPなど)

文献

Panwar R, Tarvade S, Lanyon N, Saxena M, Bush D, Hardie M, Attia J, Bellomo R, Van Haren F; REACT Shock Study Investigators and Research Coordinators. Relative Hypotension and Adverse Kidney-related Outcomes among Critically Ill Patients with Shock. A Multicenter, Prospective Cohort Study. Am J Respir Crit Care Med. 2020 Nov 15;202(10):1407-1418. doi: 10.1164/rccm.201912-2316OC. PMID: 32614244.