救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

日本におけるワーファリン拮抗薬としての「ケイセントラ®」の有効性

日本におけるワーファリン拮抗薬としての「ケイセントラ®」の有効性

(情報)
既に海外では大規模な2つの第Ⅲb相で有効性が示されている「ケイセントラ®」(静注用人プロトロンビン複合体製剤、血液凝固第II、第VII、第IXおよび第X因子の4つの血液凝固因子を合わせた製剤)について、国内での有効性を確認した第Ⅲb相試験。対象は20歳以上の11名で、いずれもPT-INR>2。そのうち6名は大量出血でビタミンK拮抗薬の急速中和を要する症例(PT-INR中間値4.76 ; 2.26-10.56)、残り5名は緊急手術・観血的処置のため事前に静注用人プロトロンビン複合体製剤の投与を要する症例(PT-INR中間値3.13 ; 2.11-5.82)であった。投与30分後でPT-INR<1.3に達したのは全体の81.8%(大量出血例で83.3%、緊急手術・処置例で80.0%)だった。止血効果が得られたのは大量出血例で60%、緊急手術・処置例で100%だった。重大な副作用が発現したのは大量出血例で90.9%、緊急手術・処置例で45.5%だった。ただし重大な副作用例のうち2例は治療に伴うもので、血栓塞栓症の発症はわずかであった。また死亡に繋がる副作用、輸液過多、ウイルス感染症の発症はみられなかった。そのため日本においても大量出血や緊急手術・観血的処置前の症例に対して、ケイセントラ®は有効と思われる。

Efficacy and safety of a 4‑factor prothrombin complex concentrate for rapid vitamin K antagonist reversal in Japanese patients presenting with major bleeding or requiring urgent surgical or invasive procedures: a prospective, open‑label, single‑arm phase 3b study
Kushimoto S Fukuoka T Kimura A Toyoda K Brainsky A Harman A Chung T Yasaka M
Int J Hematol
123 vol: 1 (106) pp: 777-786

(私見)
ワーファリン使用中の脳出血などに対して、PPSB-HT®がOff-label使用されることがありますが、今のところPT-INR値に応じた投与量が確立していなかったはずです(経験知の集積はあります)。そのため今回「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時、又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」の適応を取得したケイセントラ®が標準治療に位置づけられるのかなぁと考えています。それにしても実際の投与量で薬価を計算すると、約2.5倍くらいするんですね(体重50kgだとPPSB-HT®約64,000円、ケイセントラ®約160,000円)高い。。。

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