救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

# 抗凝固薬の服用有無に関わらず、遅発性の頭蓋内出血の頻度は少なそう

# 抗凝固薬の服用有無に関わらず、遅発性の頭蓋内出血の頻度は少なそう
 
(情報)
鈍的頭部外傷による遅発性の頭蓋内出血の発症頻度について、抗凝固薬を服用中の高齢者では十分に知見が蓄積されていない。そこで2015年8月1日〜2016年9月30日まで、55歳以上の鈍的頭部外傷で救急病院へ搬送された患者を対象とした前向き観察研究を実施。北カリフォルニアの11施設が参加。初回CTで頭蓋内出血を認めた症例、初診時にCT未施行例、電話フォローの同意を得られなかった例などを除外。14日以内の遅発性の頭蓋内出血の有無について調査した。859名が対象(中間値75歳、64〜85歳)。343名(39.9%)が抗凝固薬または抗血小板薬を服用していた。そのうち75名はワーファリン服用者であった。859名のうち3名(0.3%)で遅発性の頭蓋内出血を認めた。3名のうち1名はワーファリン服用者であった(ワーファリン服用者75名の1.3%)。残りの2名は抗凝固薬および抗血小板薬を服用していなかった(未服用者516名の0.4%)。ただし39名(全体の4.5%)は14日間のフォローアップが出来なかった。以上より、高齢者の鈍的頭部外傷による遅発性の頭蓋内出血の頻度は、抗凝固薬および抗血小板薬の服用有無に関わらず低いことが示唆された。したがって、このような症例ではルーチンでの経過観察や頭部CTフォローは不要と思われる。
 
Incidence of Delayed Intracranial Hemorrhage in Older Patients After Blunt Head Trauma
James A. Chenoweth, MD, MAS1; Samuel D. Gaona, BS1; Mark Faul, PhD, MA2; et al
 
私見
フォローアップ期間が14日間のため、今回の報告を基にCSHなどの慢性期まで考慮したリスクについて論じることは難しいと思われます。しかし抗凝固薬や抗血小板薬の服用有無に関わらず、初回CTで問題ない場合は2週間以内の頭蓋内出血の頻度が低い、という事実は患者さんや家族への説明材料として参考になるなぁと感じました。
 

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