救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

人工呼吸器の肺保護戦略はERから行いましょう

人工呼吸器の肺保護戦略はERから行いましょう

 

(情報)
ARDSに対する肺保護戦略は永らく支持されているにも関わらず、ERで行われないままICU入室してから開始されることが少なくない。そのためERから肺保護戦略を実施した場合の生命予後への影響について調べた。単施設での前後比較観察研究。介入前については18歳以上の気管挿管管理についてカルテレビューで抽出。介入後については救急外来を受診後7日以内にARDSを発症した症例を対象とした。ただし24時間以内に抜管あるいは死亡した症例、他院からの転院症例、長期人工呼吸器管理の症例は対象外とした。介入方法は、6ヶ月間の学習期間を行った(ミーティング、レクチャー、ベッドサイドティーチングなど)

229名が対象となった。介入後はERでもICUでも肺保護戦略の実施率が高まった(ER介入前11.1%、ER介入後61.5%、ICU介入前11.4%、ICU介入後35.3%)。また死亡率低下(OR 0.36; P=0.02)も認めた。

以上より、ERの時点から肺保護戦略を実施することは有効と思われる。

A Quasi-Experimental, Before-After Trial Examining the Impact of an Emergency Department Mechanical Ventilator Protocol on Clinical Outcomes and Lung-Protective Ventilation in Acute Respiratory Distress Syndrome. Fuller BM, Ferguson IT, et al: Crit Care Med; 2017;45 (April): 645-652.

 

(私見)
適切な重症管理はICUからではなく、ERへ搬入された直後から行うほうが理想的なのは感覚的に納得できるところです。今回は、そのことを確認した形になるかと思われます。単施設での介入前後比較研究のため様々なバイアスが入っているとは思われます。しかしERから肺保護戦略を実施することは、そんなにコスト(人的、経済的)がかかるものではなく、有害性が生じるものでもないように思います。そのため、これまで以上に「ERから適切なICU管理を開始しよう!」という方針で運営していきたいと思います。

 

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