救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

急性呼吸器感染症に対する抗菌薬療法の開始や中止の判断材料としてプロカルシトニン(PCT)は有用かもしれない

急性呼吸器感染症に対する抗菌薬療法の開始や中止の判断材料としてプロカルシトニン(PCT)は有用かもしれない

(情報)
Cochraneシステマティック・レビューのアップデート(前回2012年はPCTの有用性は見いだせなかった)。急性呼吸器感染症を対象に30日間の死亡率と治療失敗率を一次エンドポイント、抗菌薬使用期間、副作用、入院日数を二次エンドポイントとして調査。32のRCTが抽出され(今回新たに18のRCTが追加された)、そのうち26の研究、6708名の研究データを得ることができた。

一次エンドポイント:急性呼吸器感染症を対象とし、PCTを指標として治療を行った患者の死亡率8.6%(286/3336名)、対照患者の死亡率10.0%(336/3372名)で、PCTを指標とした方が有意に死亡率が低かった(OR0.83)。治療失敗率は有意差を認めなかった(23.0% vs 24.9%、P=0.068)。

二次エンドポイント:PCTを指標とした方が抗菌薬使用日数が2.4日間短かった(5.7日 vs 8.1日、P<0.001)。また副作用も少なかった(16.3% vs 22.1%、P<0.001)。入院日数やICU滞在日数は有意差を認めなかった。

したがって今回のレビューでは、急性呼吸器感染症に対してPCTを指標に抗菌薬療法の開始や中止を判断することで、死亡率の抑制、抗菌薬使用量の抑制、抗菌薬関連副作用の抑制を図れることが示唆された。

Procalcitonin to initiate or discontinue antibiotics in acute respiratory tract infections. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Oct 13;10:CD007498.

(私見)
ウチの職場では院内でPCTを迅速検査できません。外注のため検査結果が到着するまで数日間かかるため、治療方針へ反映させることが困難です。とはいえ今回の結果では、PCTを活用することで急性呼吸器感染症に罹患した約3300名のうち約50名ほど死亡者数を減らせるかもしれない、と考えるとインパクトある結果だなぁと感じます。現実的には検査室の機器類を更新する際に、PCT測定項目を追加するかどうかってことになるんでしょうね、、、(BNPがそうだったように)

f:id:sasakitakanori:20171101011104p:plain