救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対する緊急PCIでは責任病変のみに留めたほうがよさそう

心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対する緊急PCIでは責任病変のみに留めたほうがよさそう

(情報)
心原性ショックを伴う急性心筋梗塞(AMI)では、緊急PCIによって責任病変の再開通を迅速に行うことで、転帰を改善させることができる。しかし心原性ショックを呈するAMIでは多枝病変を伴っていることが多く、責任病変以外の狭窄病変についても緊急PCIの際に併せて治療すべきかどうか結論が出ていない。

そのため他施設共同無作為化非盲検試験を実施。706名の心原性ショックを呈した多枝病変を伴うAMI患者が対象。無作為に責任病変のみ治療する群(責任病変治療群)と、他の狭窄病変も一緒に治療する群(多枝病変治療群)へ割付。一次エンドポイントは30日以内の死亡、腎代替療法の実施とした。

30日以内の死亡および腎代替療法は、責任病変治療群で158/344名(45.9%)、多枝病変治療群で189/341名(55.4%)であった(RR 0.83, 95% CI 0.71-0.96, P=0.01)。多枝病変治療群に対する責任病変治療群の死亡の相対リスクは0.84( 95% CI 0.72-0.98, P=0.03)、腎代替療法の相対リスクは0.71(95% CI 0.49-1.03, P=0.07)。

したがって心原性ショックを呈した多枝病変を伴うAMIでは、初回治療の際に多枝病変を一気にPCIするよりも、責任病変のみPCIするほうが30日以内の死亡または腎代替療法の頻度が少ない。

N Engl J Med. 2017 Oct 30. doi: 10.1056/NEJMoa1710261.
PCI Strategies in Patients with Acute Myocardial Infarction and Cardiogenic Shock.

(私見)
外傷治療におけるDamage control surgeryのように、循環動態が著しく悪い場合は、循環動態に関わる責任病変の治療を最優先し、それ以外の狭窄病変は全身状態が良くなってから二期的に治療する方がよさそうですね。私自身がPCIすることはありませんが、全身状態が非常に悪い場合の緊急PCIでは、外回り(全身管理)を担うことがありますので、救急医療の周辺領域として理解を深めておこうと思います。

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