救急医?の雑記帳

日々感じたこと,調べたこと,得たこと,目標としていることなどを備忘録目的に不定期にまとめていこうと思います.

中等度の急性膵炎でも積極的な輸液療法を考慮する

中等度の急性膵炎でも積極的な輸液療法を考慮する

(情報)
60名が参加した単施設ランダム化比較試験。上腹部痛・アミラーゼまたはリパーゼの上昇(正常上限の3倍以上)・急性膵炎の画像所見のいずれか2つを満たした急性膵炎を対象とした。ただしSIRS、臓器障害を認めるものは除外。対象となる急性膵炎の患者は4時間以内に、積極的輸液療法群(20ml/kgの急速輸液と3ml/kg/hの持続点滴)と、標準的輸液療法群(10ml/kgの急速輸液と1.5ml/kg/hの持続点滴)の2つへ無作為に割付。輸液はいずれも乳酸リンゲル液を使用した。36時間後の臨床所見の改善(ヘマトクリット・BUN・クレアチニンの低下、腹痛の改善、経口摂取可能)がみられるか評価した。

36時間時点で、積極的輸液療法群のほうが標準的輸液療法群と比較して、臨床所見の改善例が多くみられた(積極群70% vs 標準群42%)。積極的輸液療法群のほうがSIRS発症率が低かった(積極群7.4%、標準群21.1%)。血液濃縮の発症頻度も積極的輸液療法群のほうが低かった(積極群11.1%、標準群36.4%)。いずれの症例でも過剰輸液の徴候はみられなかった。

よって中等度の急性膵炎では、早期から乳酸リンゲル液による積極的な輸液療法を行うことで、臨床所見を改善しうることが示唆された。

Early Aggressive Hydration Hastens Clinical Improvement in Mild Acute Pancreatitis. Buxbaum JL, Quezada M, et al: Am J Gastroenterol; 2017;112 (May): 797-803.

(私見)
臨床感覚に一致した研究結果だと感じます。充分に輸液を行い、充分に鎮痛し、充分に血糖コントロールを行う、ですね。

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